みちのく便り 4日目

 朝5時頃、目が覚めて外を見たら、丁度海面から太陽が顔を出していて、あっと言う間に上り始め、素晴らしい風景でした。ここに来て、この自然に出会えた事を、心から幸せだと感じた瞬間でした。

 昨晩は、荷物を送る準備をして、今度は希望者のみ夜の星を見に出かけたようです。

 予定どおり7時に朝食。この日もバイキングでしたが、子ども達も慣れてきてスムーズに食事ができました。昨晩の夕食も昨日と同様に大広間で、畳の上に座布団が敷かれた環境での食事でした。椅子での食事に慣れているのでしょうか、初日は慣れずに座っていられない子も多かったのですが、2日目は板についた子どもの姿を見て、環境作りの大切さを学ばされました。

 「えぼし荘」を早目に出発したら、野田の道の駅「ぱあぷる」が未だ開いておらず、30分ほど待ちました。子ども達は買い物が楽しみのようです。道の駅で昨日、私のいとこがおやつに出してくれた地キュウリをみつけ、海老名に残っている他の子にも食べさせたくて、宅急便で買って送りました。

 道の駅で買い物をした後は、やっと楽しみにしていた「もぐらんぴあ」に向かいました。
 晴天で、久慈の海岸から昨日の海水浴場も遠くに見ることができました。久慈市の石油備基地の手前に大きな造船所がある事も知りました。来られなかった時間に造られたものかもしれません。
 「もぐらんぴあ!もぐらんぴあ!」と待ちに待っていた場所にやっと来られて、満足そうな子ども達でした。津波の被害にあうかなり前から、この小さな水族館が石油備蓄基地を作ったことをきっかけに、この海に住んでいる魚を集めて作ったようですが、水の中の環境のアイディアが人を引きつけているようです。例えば「メダカ」の水槽ですが、水槽内の環境設定が学校になっていて「メダカの学校」そのものです。その水棲生物にあった想像力豊かな発想が良く、あの有名な”さかなクン”も、震災で「もぐらんぴあ」が破壊された時も、何度も訪ねて来て、再建に力を貸して下さったようです。
 この課外活動で「もぐらんぴあ」に訪れた初期の頃から子ども達はこの水族館が大好きでした。「大都会の子ども達がどうしてこんな小さな場所なのに、喜んでもらえるんでしょうか?」と水族館の方に質問されました。即座に「職員の方々のアイディアが、楽しい水族館にさせているのだと思います」と答えたのを覚えています。

 有料で「ドクターフィッシュ」体験ができるのですが、おこづかいの残りを各自で計算して、チャレンジする子、お土産のためにとっておく子といて、それも勉強だなと感じました。

 あまり知られていませんが、久慈市の石油備蓄基地には、日本全国で通常どおり石油をつかった場合の3日分、岩手県だけであれば1年分は生活できる石油が眠っていて、あの震災の時も大きな被害がなく、私も安心したことを覚えています。

 子ども達は2時間近く遊んできて楽しかった!!と満足気に地下から暑い地上に戻ってきました。すぐにバスに乗り込み、葛巻高原に向かいました。11時半頃から約1時間。車内は休息の時間です。
 12時半頃着きましたがやはり貸切状態で、まずは手入れされた芝生の上で車座になり、えぼし荘で作ってもらったおにぎりのを食べました。食べ終えた後は、小動物との触れ合いや遊具で遊びました。4mほどの高さの木のタワーがあり、3点歩行で5~6年生の男女がスイスイ登っては降りで、その楽しそうな姿を見ながら、木登り感覚なのだろうと眺めながら私は文章書きをしていました。2時間近く戸外で遊び、待望のソフトクリー ムを食べ、買い物をしました。子ども達からも、「美味しい!!」の連発でした。この人数だと、必ず落とす子が一人はいます。改めて買ってあげますが、その子が傷つくのは必然。注意散漫、口ばかりが動き手が留守でおきること。それも勉強です。

 葛巻高原で走り回って遊び、アイスを食べて満足し、買い物をしてバスに乗り、盛岡を目指しました。また車内ではお昼寝タイムです。

 途中、石川啄木記念館の反対側にある、渋民公園に寄ってもらいました。以前は、元教師の上品なおばあちゃまが、この渋民公園で子ども達の為に「駄菓子屋」を営んでおいいでで、縁有って、岩手課外活動の最後はここに寄り、紙飛行機やシャボン玉を買って隣の芝生で遊んで帰る…が数年恒例になっていましたが、おばあちゃまが高齢になられて、駄菓子屋が開かなくなってからは、足遠くなってしまっていました。様子が見たくて寄ったら、なんとお孫さんが管理をなさっていて、感動の出会いでした。祖母とつながり嬉しいですと仰ってくださり、富樫先生も、孫同志で関わり合うことができ、改めて縁を感じました。以前にここへ来て、育った子ども達もほとんどが社会人。 この出来事を聞くと喜ぶと思います。
 茶屋の横に立ち、手を振り見送ってくださったお孫さんの姿はおばあちゃまそのままで、これも又、”心”を感じて、引率した子ども達にも、先輩達の思い出の場所を語ってあげました。

 次は夜行バス発車までの間、入浴と食事のためにゆっこ盛岡に向かいました。盛岡の街中にあり立派な建物なのですが、入浴後に休憩する為には「湯着」に着替えなければならず、入浴して食事をした後に休憩所に行くと、数人いらっしゃり、静寂に包まれていて、とても反省会をするどころではありませんでした。直ぐに「フジクラドライブ」に連絡して、バスの中で過ごさせてもらえるように交渉。すぐにバスが来てくれましたが、その間、迷惑をかけないよう「忍者になろう!!」と声かけをして、ソ~と移動しました。

 子ども達は敏速に動いてくれて、ロッカーの鍵を紛失することも無く、きちんと団体行動ができた事に安堵し、子ども達に本当に感謝しました。
 常日頃の習慣がいかに大事かと言う事を学ばされて、子ども達の優秀さにも改めて感じ入りました。

 「フジクラドライブ」の運転手さんの配慮から、盛岡駅の近くに停車していただき、バスの中で反省会をしたり、表彰式をしたり、忘れ物が無いよう片づけもして、23:30、新宿行きの夜行バスに乗り込みました。夜行バスが来るギリギリ迄、「フジクラドライブ」の運転手さんが見守ってくださり、 本当に感謝でした。

 夜行バスの中でも変わり無く、7時頃に新宿駅に到着。ロマンスカーの乗車も、20名がきちんと団体行動ができて、この数日の緊張感によって成せる業だと、子ども達の成長にこの活動の意義を感じました。
 海老名駅で迎えに来られた保護者の方々も、心配の日々であられたろうと、毎日その気持ちを和らげていただきたいと文章で報告しました。子ども達は親から離れてきっと成長しているはずで、今後この経験が血や肉になって自身を幸せに、又社会の為になって欲しいと続けています。 コロナ後のまだ不安もある中、参加していただきましたこと、心から御礼申し上げます。
 引率者4名、子ども達からパワーをもらい、幸せな時間でした。ありがとうございます。

                                       園長 米田記